思いこみアイドル…エリコ物語…冬の巻
いや〜昨日のゲスト、エリコちゃん(自称アイドル…あいたたた)の天然素材ぶりには、盛り上がりました。
昔(ちょい前)は僕と一緒にステージ乗っていまして、そこそこ付き合いも長いのですが、その頃のお話をちょこっと…
その頃のお店のマンション寮がたまたま上と下でした。
上に僕、下にエリコちゃんでした。
それは雪の積もる寒い冬の夜中でした。
いつものように、夜中に家に帰り、いつものように、シャワーを浴びようと蛇口をひねると水がでません。
『これは凍結しているな。』そう思い、再びいつものガウンをはおり、エリコちゃんに電話をしました。
『夜中にごめんね、エリコちゃんの家は水出るかな、俺の家の水道が凍結…』
そう話しきらないまでに、エリコちゃんお得意の『上から見下ろししゃべり』で、『水はでますよぉ〜あら水が出ないんですかぁ〜大変ですねぇ〜明日にでも不動産屋さんに電話してみたらいいんじゃないですかぁ〜じゃあぁ〜おやすみなさぁ〜い。』
…僕も凍結しました。
なんてすがすがしい、竹を割ったような性格なのでしょうか?
僕は心の中で、『エリコちゃんは悪くない、悪気もない、天然素材だから…』そう言って自分自身を溶かし始めました。
『ん〜どうしよう、洗えない〜手も顔も命の次に大事な髪の毛も、もちろんシャワーやトイレも…』ぼくの心が溶ければ溶けるほど、何か不安な思いに、かりたてられてきました。
その時ですっ!
階段を駆け上がる音が聞こえました。
『これはあいつに違いない!』
僕は急いで、いつもの右手に持ったブランデーグラスをテーブルに置き、電話をしました。『水でるか?』すると、『水が出ないんてすか?ペットボトルの水があるから、持っていきますよ。』
声の主はベーシストのハックでした。(現在はバンド[ハニーバニー]と[ブラウンシュガー]にてダブルキングカフェにも出演中)
なんと優しい人なんだろう〜そして値段はいくらとられるんだろう〜そんな事を考えていると『ピンポーン。』チャイムが鳴り『大変ですね、どうぞ使って下さい…そんなっお金なんていらないっすよ。』びっくりです!こんな人が居るんだっ!僕の心は完全に溶けていました。
『ありがとう!ハック』そう言いたかったのに、涙や鼻水のバカやろ〜『はひはぁろぅ〜ファッフゥ』
二人は泣きながらの抱擁をすまし、別れを告げ、僕は[六甲の水]で手を洗い、歯を磨き、顔を洗いそしてコーヒーを入れ今できる最高の贅沢を満喫し、眠りにつきました。
ふっと目が覚め、時間はお昼前…吐く息は白く、外は白銀の世界、そんなとき電話が鳴りました。『どうしたらいいんですかぁ!お水が出ないんですぅ!洗濯出来ないぃ!顔があらえないぃ〜!お水ないですかぁ〜』
…エリコちゃんです。
それは半ベソな声でした。
そして僕の目の前には栓の開けていない、もう一本の『六甲の水』。
心の天使と悪魔が僕に問いかけます…。『困っている仲間を助けてあげて!』そう天使が叫べば、『ブワッハハ!やめっろ!昨日を思い出せ!おまえの大事な水じゃないか!』と悪魔が引き留めます。
『どうしよう〜俺はどうしたらいいんだ!』心が揺れ葛藤します。
気がつくと階段を降り、エリコちゃんの部屋の前に居ました…『六甲の水』を持って。
『ピンポーン』っ『はぁーいっ!』『水持ってきたよ。』『えっ!すみませぇん〜わざわざ持ってきてくれたんですかぁ〜ありがとうございまぁ〜す!でもぉ〜さっきぃ〜水が出ましたぁ!』『あ〜そうなんや…』『はいっすみませぇ〜ん、ありがっとうござあましたぁ〜』
その会話の間、エリコちゃんの姿を見ることはありませんでした。
二リットルを一気に飲み干してやろうと思いました。
それはそれはしょっぱいしょっぱい味がしました…
全部は無理でした。
それはまだ春の香りもしない雪つもる寒い真冬の物語です。
追伸
本当は優しい、可愛いエリコちゃんの春、夏、秋編をまたの機会があれば報告いたします。